私は、アート系の小説が好きなので、
タイトルにそれらしきものがあるとつい選んでしまう。
今回は同じような時期に、小説『風神雷神』を2作品読了しましたので
その対比をしながら感想を書いてみました。
『風神雷神 Juppiter、Aeolus(ユピテル アイオロス)』原田マハ著
原田マハ著『風神雷神』は、
完全に創作の俵屋宗達を描いており
登場人物に織田信長、狩野永徳、カラバッジオ等
およそ接点の無かった人物を
絵を描くシーンや物語の盛り上がる場面で設定している。
絵画制作シーンは原田マハさんの真骨頂ですから、
ここはページを繰る手が止まらない。
天正遣欧少年使節といっしょにバチカンへ旅をするストーリーは
壮大な少年冒険小説を読んだイメージを持ちましたね。
この小説は原田マハさんのかなりのフィクションなので
物語としては最高に面白いんですが
もう少しリアルを感じたい小説であれば、
柳広司さんの「風神雷神」がいいかもしれません。
詳しくはブログにも書いたので良かったら覗いてください。
『風神雷神』柳広司著
先に原田マハ「風神雷神」を読んでいたので、
こちらは随分違う俵屋宗達を読むことができた。
というか、こちらの方がまだ史実に近い感じなのでリアル感を楽しめた。
上巻 作品内容
扇屋の絵師から法橋にまで登り詰めた鬼才、俵屋宗達。
生没年不詳の男の一生を、同じ時代を生きた天才らとの出会いから紐解く、波瀾万丈、一気呵成の歴史エンタテインメント。
評判の扇屋「俵屋」の後継ぎとして大旦那の養子となった伊年は、秀吉が開催した醍醐の花見で見た屏風絵や、出雲阿国の舞台、また南蛮貿易で輸入された数々の品から意匠を貪る。
彼が絵付けをする「俵屋」の扇は日に日に評判を増していた。
伊年が平家納経の修繕を頼まれ描いた表紙絵は、書の天才、本阿弥光悦の興味を惹く出来となる。
伊年は嵯峨野で出版・印刷事業を始めた幼馴染みの角倉与一より、光悦が版下文字を書く日本語書物の下絵を描かないかと持ちかけられる。その料紙を手配するのは、これまた幼馴染みの紙屋宗二。
かくして本朝の美と叡智の粋を結集した「嵯峨本」が完成した。
次に、伊年が下絵を描き、光悦が書をしたためた「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」が完成。
京の知識人はもちろん、伊年自身もその出来に驚嘆し、涙を流す。
その後光悦に鷹峯へ共に移住しないか問われた伊年は、嘗て観た阿国の舞台や来し方を脳裏に浮かべ、誘いを断り、俵屋を継ぐ決意をした。出典:「風神雷神」柳広司
醍醐の桜、出雲阿国、本阿弥光悦等、
歴史人物との絡みに読者をワクワクさせる。
本中に出てくる作品をネットで検索しながら読むというのは、
絵画が好きな人にとっては、なかなか感慨深いものがある。
本書にも登場する作品2点
俵屋宗達、本阿弥光悦『鶴下絵三十六歌仙和歌巻」京都国立博物館 重文
俵屋宗達「蔦の細道図屏風」承天閣美術館 重文
出典:雑誌「BRUTUS」琳派って誰?2008.10/15号
また、作品自体に崇高さを感じることができる。
風神雷神図については、
最後に少し出てくるだけなのでやや物足りないが、
その他の作品については色々背景に物語を知ったので、
これから本物の作品を鑑賞する時はより一層感動するだろなぁ。
下巻 作品内容
絵画界に革命を起こした「風神雷神図屏風」。爛熟した時代、天才たちとの出会い、天皇直々の評価
――そのすべてが、扇屋の絵師を鬼才・俵屋宗達にした。万能の天才・本阿弥光悦からの鷹峯移住を断り、京で「俵屋」を継いだ宗達は、堺の商家の娘・みつを娶り、二人の子を生した。
都で一番の扇屋の主人として忙しく働いていたある日、名門公卿の烏丸光広が前触れもなく俵屋を訊ねてくる。烏丸光弘の手引きで養源院に唐獅子図・白象図を、相国寺に蔦の細道図屏風を完成させる。
後水尾天皇から法橋の位を与えられ、禁中に立ち入れるようになった宗達は、さらなる名品を模写する機会を得、その筆をますます研ぎ澄ませる。日本の絵画に革命を起こした関屋澪標図屏風、舞楽図屏風、そして風神雷神図屏風
――世界が憧れた謎の絵師はいかにして生まれ、没したのか。
美術界きっての謎が斬新かつ丹念に描かれる。出典:「風神雷神」柳広司
こんなブログも書いてますので良かったら見てください。
この2作品は全く違うテイストの小説「風神雷神」になっていますので、
両方読んでもそれぞれ十分楽しめますよ。(^^)
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