8ページの漫画とは
私が、江戸川乱歩の『人間椅子』を知ったのは
『定番すぎる文学作品をだいたい10ページくらいの漫画で読む』という漫画でした。
著者は「ドリヤス工場」
発行 リイド社
平成28年8月に初版の漫画です。
この『定番すぎる文学作品をだいたい10ページくらいの漫画で読む』というのは
文豪作家を中心に21作品のあらすじと作者紹介をだいたい10ページで
漫画で描いているというコミックスです。
<内 容>
「坊っちゃん」「金色夜叉」「斜陽」「蟹工船」「徒然草」「破戒」「人間椅子」……
誰もが知ってる名作の、意外と知らないあらすじが一発でわかる。今からでも余裕で間に合う、最強&最ゆるの文学ガイド!<収録作品>
夏目漱石「坊っちゃん」
織田作之助「夫婦善哉」
国木田独歩「武蔵野」
芥川龍之介「地獄変」
チェーホフ「桜の園」
尾崎紅葉「金色夜叉」
徳冨蘆花「不如帰」
小林多喜二「蟹工船」
ウィーダ「フランダースの犬」
作者不詳「マザー・グース」
吉田兼好「徒然草」
有島武郎「カインの末裔」
太宰治「斜陽」
スウィフト「ガリバー旅行記」
陳寿「魏志倭人伝」
梶井基次郎「桜の樹の下には」
島崎藤村「破戒」
江戸川乱歩「人間椅子」
アンデルセン「人魚姫」
森鴎外「ヰタ・セクスアリス」
宮沢賢治「銀河鉄道の夜」引用:リイド社
この21作品のなかに「人間椅子」はありました。
漫画「人間椅子」の内容は
この8ページに描かれた「人間椅子」ですが
短編小説だからでしょうか、8ページに綺麗に収まっているのです。
他の小説は無理やり10ページに収めようとするのか、
内容が飛びがちであったり、ストーリーがわかりにくかったり、
小説の趣きが無かったりで
不十分さが残る印象が強かったのですが
この「人間椅子」は流れもしっかりできていました。
大きなストーリーとしては、
椅子職人の「私」が自分の作った大型の肘掛椅子の中に入り、
座る人間の感触が堪らなく心地よくなり、
その椅子が時と共に持ち主が変わる中で、
女流作家の佳子の元にその椅子が渡ることに。
やがて、「私」は椅子の中から、
佳子に恋愛感情を抱くようになった。
そのいきさつや感情を手紙で佳子に伝えていったのだが・・。
最後にあっという結末が待っていた。
ストーリーとしては、スリラーサスペンスでしょうか。
江戸川乱歩独特の気味の悪さも伝わり
最後のオチは書けませんが、見事でした。
初めて「人間椅子」を知って名作だと思いましたから。
小説「人間椅子」を読んで
実は『江戸川乱歩傑作選』という文庫を持っていたのですが
未読の本棚に飾ってあるだけで、なかなか手が伸びず
今日まで来てしまっていたのですが
この時ばかりと、本書をめくってみると
「人間椅子」がありました。(良かった)
さっそく、読んでみると、
これが漫画とほぼ同じで感心しました。
もっと、漫画では遊びがあるのかなと思っていたのですが
文章もほぼ同じように書かれていました。
(もちろん抜粋簡略化なのですが)
ですから、この「人間椅子」についてはこの漫画だけでも
要約として完成されているなと感じましたね。
「10ページくらいの漫画・・」シリーズ
『定番すぎる文学作品をだいたい10ページくらいの漫画で読む』は他にも
『有名すぎる文学作品をだいたい10ページくらいの漫画で読む』
『必修すぎる文学作品をだいたい10ページくらいの漫画で読む』
の3シリーズで発行されています。
どの漫画本もうまく作品を散りばめられていて、
一長一短あるかなという印象です。
中に描かれている著者や作品名を見ると
すべての小説を知っているわけでありませんし
読んだ本も内容を忘れている事も多いです。
そんなことを考えるとこの漫画本は、
文学好きには読んでおきたい漫画本ではないでしょうか。
ドリヤス工場は「文豪春秋」というコミックスもあります。
参考までに
コメント