はじめに
この漫画は2008年4月初版
山川直人氏としては2作目のコミック本(ビームコミックス、発行㈱エンターブレイン)
私は、山川直人氏の漫画は初めて読みました。
選んだ理由としては、紹介文に萩原朔太郎、ブレヒト、チェーホフの原作を
漫画にしているという文面に惹かれたからです。
「地球の生活」のあらすじ | ストーリー
萩原朔太郎、ブレヒト、チェーホフら、文豪たちの作品を漫画化した諸作、詩心と諧謔味に溢れた幻想譚、そして、あっけにとられるナンセンス! その、一筋縄ではいかない不思議な世界を、ご堪能あれ。武富健治(漫画家)「ぼくが山川兄いの漫画を読みたくてたまらなくなるのは、寝つく前の夜更け、部屋にひとりで、少し心の冴え渡ってきたそんなときだったり。そんな夜でも、ナルミさんに会いたい夜もあれば、半月目のあのコでなくちゃ!という、夜もあって。あやしいあのコや、タコ足のアイツたちが、いっぱいつまった新しい一冊の本が、見知らぬあなたの本棚に入るのは、想像するだけでたまらなくうれしい。この本は、いわば、アナザー・サイド・オブ・山川直人、なのです」
引用:マンが王国
※今の表紙は火星人になっているようです。
漫画のイメージは版画風
漫画のイメージは銅版画のようなタッチ(カケアミ?)で描かれていて
登場人物も素朴な無駄を省いた絵だったので、詩をテーマにするにはいいんじゃないかと思いました。
以前読んだ本に「賢治草紙」という宮沢賢治の作品を
イラストと共に書かれた本がありました。
私は、そのイラストがよく似ているなと感じましたね。
(全体的には全く違うのですが)
特に、「ほら穴」という作品は賢治のイラストによく似ていました。
詩的な作品には版画のような現実と空想が半分づつの表現がいいかもしれないと思いましたね。
作品は同人雑誌に掲載中心の12作品
作品については同人雑誌等掲載された短編を中心に12作品があり、
その内、下記の作品が
● 「この手に限るよ」 萩原朔太郎(同名の詩が原作)
● 「火星人ヨシオ」 ベルトルト・ブレヒト(「戯曲三文オペラの劇中歌「海賊ジェニー」原作)
● 「たちくらみ」 アントン・チェーホフ(中編小説「黒衣の僧」が原作)
の原作を使っているそうです。
上記の作品も悪くは無かったのですが
私は、「ほら穴」と「おしゃべりなカラス」が
山川直人氏らしい作品じゃないかと感じました。
「ほら穴」については、汽車で旅をする男性が
途中に母親らしき女性になぜか出会い、なぜか喫茶「ほら穴」で欲しかった本に出合い・・。
というような内容なのですが、
私が感じたのは
<現実か幻想かわからないような、また深層心理が映し出されているような世界観>
この世界感が山川氏の漫画じゃないかなと思いましたね。
「おしゃべりなカラス」は元々「文藝的な、あまりにも文藝的な」というタイトルだったようですが。
作品の内容からは「文藝的な・・」なのでしょうが、
タイトルに哲学的な要素を省いて、敢えて「おしゃべりなカラス」にしたのかなと勝手に想像しています。
この作品の面白いところは、最後に有名な文豪の名前が唐突に出てくるシーン。
かなり印象的でこれは山川直人氏にしかできないオチかなと思いました。
最後に
読み終えて、もう少し山川直人氏の漫画を読んでみたいと感じました。
この作品はまだ初期の頃の様ですし、
この後、この世界感がどう変化していくのかも楽しみでもありますし
紙書籍版が品切れになっている単行本のうち『あかい他人(全)』『地球の生活』『コーヒーもう一杯/Ⅳ』が山川家の押入れから発掘されました。少しくすんでますが新品未読品です。#古書はなうた堂~山川直人原画展 pic.twitter.com/Ddb8KLYpsV
— 山川直人 (@emikanta) April 6, 2022
作風も詩的で、文学的要素も含まれているので
大変興味があります。
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