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柴門ふみ著、向田邦子漫画館『花の名前』|名作漫画掘り起こし

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漫画
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柴門ふみ、向田邦子のダブルネームに惹かれる

柴門ふみさんの漫画と、向田邦子さんの小説の原作という、

著名なお二人のダブルネームの作品ということで

この漫画を読んでみた。

まあ、どちらかと言えば恋愛系や男女の物語は

小説も漫画も読むことは少ないので

お二人の作品も縁が遠いわけですが

なぜかこの本は惹きつけられた。

なんだか珍しくて貴重な作品だなと思って。

 



向田邦子「思い出トランプ」の短編が原作

この漫画は2002年8月に初版されています。

向田邦子さんの「思い出トランプ」の短編5編を含む9編で構成されています。

「思い出トランプ」は1980年上期の直木賞を受賞しており

向田邦子さんは翌年に飛行機事故で亡くなっている、という何やら印象深い作品だったようですね。

作品の解説 水上勉

連作短編のようだから、完結をみてからでもと(直木賞の)授賞を見送ろうとする委員もあったにかかわらず、山口瞳、阿川弘之両氏と私の三人が強力にねばった日のことがわすれられない。わずか二十枚前後の短編三作であったけれど、誰もが真似できぬ辛苦の世界へ入って彫(きざ)みこんでいる、向田さんの世界がみずみずしい花のように見えたからである。それがみとめられて受賞となり、やがて一年も経たないうちに、飛行機事故で亡くなられてみると、人生無常の思いが、いっそうつよくなり、向田さんの文学は、読者を打つこととなった。
――水上勉「向田さんの芸」

引用:「思い出トランプ」新潮文庫 解説より

ちなみに、直木賞は「花の名前」「犬小屋」「かわうそ」の三作品

向田邦子(1929年―1981年)

東京生れ。実践女子専門学校(現実践女子大学)卒。人気TV番組「寺内貫太郎一家」「阿修羅のごとく」など数多くの脚本を執筆する。1980年『思い出トランプ』に収録の「花の名前」他2作で直木賞受賞。著書に『父の詫び状』『男どき女どき』など。1981年8月22日、台湾旅行中、飛行機事故で死去。

引用:「思い出トランプ」新潮文庫 

主な作品の内容は

全体を通してのテーマは、

夫婦のお互いの心のすき間や

男と女の恋愛の心の機微が色々な形になった物語で構成されています。

「だらだら坂」

旦那は個性的な顔の女性が好きで、そんな愛人できたのだが、その女性が整形をしてしまって複雑な心境を描いた物語。

「はめ殺し窓」

自分の過去にあった母親の浮気と娘の旦那の浮気が同じような体験をデジャブ的な可笑しさとして描いている。

「かわうそ」

あっけらかんとして、愛嬌があり憎めない性格の嫁であるが、自分勝手なところもあり、その性格が娘の命を奪ってしまっていた?という怖い話。

「花の名前」

妻は知性があって育ちが良く、夫もそういったところが好きで結婚したと思っていたのだが、年月が経って浮気しているかもしれない女性が現れ、妻である自分とは全く反対の女性であることを知り、時間と共に男と女の思考の変化を、花の名前をモチーフにして展開する物語。

「犬小屋」

カッちゃんという魚屋の店員が、あることのきっかけで達子の犬小屋を作ることから、達子の家族とも仲良くなり、ある日達子に接近しようとするが、カッちゃんの一人妄想が暴走し、アダになってこの街を出ていくという話。

ここまでが、「思い出トランプ」の中に入っていた短編5作です。

他、「鮒」「嘘つき卵」「隣の女」「春が来た」の4編で構成されています。

どの話もどこかに悲しさや切なさがあって、

人間って動物は本能の部分と自分を抑制する部分との

葛藤が常につきまとっているんだなと感じさせる物語でした。

 



柴門ふみさんの漫画は

柴門ふみさんの漫画はホームドラマの様に描かれていて良かったですが

向田邦子さんの小説は決して漫画化するのは容易くなかったと思います。

何かがドラマチックに展開していくストーリーではないですから

盛り上げ方も難しいでしょうし、

心象的な場面の移り変わりをどう表現するかだったと思います。

何より向田邦子さんの小説を尊重する為に、

イメージも大切にしたことだと思います。

しかし、素人目に見ても、

余韻や印象が残るいい作品だったなと感じました。

本書「向田邦子の深み」柴門ふみ より

私が向田邦子の作品に魅かれるもう一つの理由は、結末の苦さである。小説の多くは何の救いもないラストを迎える。その厳しさに、向田邦子の孤独を感じるのだ。諦め、と言ってもいい。私は諦めを知っている人間が好きだ。本当のおとなは、諦めの見極めが上手な人のことだから。

この作品のすべてがこの言葉の中にあると思いましたね。

プロフィール

柴門 ふみ(さいもん ふみ、1957年1月19日 – )は、日本の漫画家、エッセイスト。徳島県徳島市出身。バブル期に既発漫画がトレンディドラマの原作として使用される一方で、恋愛エッセイを数多く執筆。恋愛の巨匠、恋愛の教祖とも呼ばれた。ペンネームはポール・サイモンにちなむ。夫は同じく漫画家の弘兼憲史。弘兼との間に1男1女があり、娘は吉田戦車の『伝染るんです。』の企画に寄稿したこともある。

引用:コミックスペース

最後に、巻末の久世光彦と柴門ふみの対談

    柴門ふみの「向田邦子の深み」「あとがき」も読みごたえがありました。

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