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中野京子の本『欲望の名画』|ミレイとフェルメールをピックアップ

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アート
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この本は月刊誌『文藝春秋』のカラーページの連載分の26作品

改題、加筆修正した本だが

その解説のすばらしさは、

流石に人気のある西洋絵画解説の作家さんです。

今回はその中でも、

ミレイオフィーリアフェルメール真珠の首飾りの女

絵画の説明が如何にも「文章の絵画」になっていることに

焦点を当ててみました。

<作品紹介>

絵画に隠されたメッセージを紹介し、
画家の意図や時代背景までを鮮やかに
読み解いてきた中野京子さんによる最新刊。

今回のテーマは「欲望」

激しい愛情、金銭への異常な執着、
果てない収集癖、飽くなき野心など、
あらゆる欲望を絵画に込めてきた。

引用:文藝春秋ブックス

掲載されている作品は

第1章 愛欲
ドラクロワ「怒れるメディア」
ミレイ「オフィーリア」
ビアズリー「踊り手の褒美」
ダ・ヴィンチ「最後の晩餐」 他

第2章 知的欲求
ラ・トゥール「ポンパドゥール夫人」
ラファエロ「サン・シストの聖母子」
ブリューゲル「子供の遊び」 他

第3章 生存本能
ゲラン「モルフェウスとイリス」
レーピン「ヴォルガの船曳き」 他

第4章 物欲
クリムト「ベートーヴェン・フリース」
フェルメール「真珠の首飾りの女」
ボス「守銭奴の死」

第5章 権力欲
ホルバイン(子)「ヘンリー八世像」
メンツェル「フリードリヒ大王のフルートコンサート」他

引用:楽天ブックス

ミレイ『オフィーリア』

                        上記絵画 出典:ウィキペディア

この本に紹介されている絵を語る際、

前段はその絵にまつわる背景やストーリーなどが描かれていて、

中盤より絵画の説明をされることが多い。

このオフィーリアについても

前段はシェークスピアの話やハムレットの悲劇の話、

そして、オフィーリアが川に流れるまでの説明がされています。

しかし、ここで注目したのはその絵画の説明文です。

水に呑み込まれる直前。

無邪気に歌いながら漂い流れていく彼女の虚ろな表情。

膨らんだスカート。

まるでそれ自体が花のような手のひら。

見守るコマドリ。

なにより、ミレイの完璧主義はオフィーリアを取り囲む花や植物に、

彼女自身とその運命を暗示するものばかりを選んで丹念に選び描き込んだことだ。

引用:欲望の絵画

まるで絵の様子が見えてくるような表現が印象に残りました。

中野京子さんの絵画の説明は、

まるで文字で絵を描くように表現されるのです。

 



フェルメール『真珠の首飾りの女』

                  上記写真出典:MUSEY

フェルメールのページでは、

まずフェルメール自身の記録が少ないことの説明から入っています。

フェルメールの自画像の絵が無い事、日記や手紙も無いそうです。

作品数も30数点と少なく、43歳で亡くなっています。

謎が多い画家だったようですが、

そんな画家がどうしてこのような静謐な絵を描けたのか、

益々興味を惹かれます。

さて、『真珠の首飾りの女』を中野さんはこのように表現されています。

窓の脇(画面の左端)に掛けられた小さな窓に姿を映し、若い少女が真珠の首飾りを付けようとしている。まだ留め具は発明されていないので真珠を紐で結ぶしかない。どのあたりで結べば丁度良い長さになるのかを目測として前で結わえ、それから結び目を後ろへ廻すのだ。

引用:「欲望の名画」

さらに、物の説明は詳しくなる。

このヒロインの周りにもさまざまな「物」があふれている。

首飾りもそうだが、ピアスも真珠で、しかも粒がかなり大きい

最高級品アーミン付ガウンは普段着ではなく特別な機会につける物。

すでにメイク済みなのは、溶いた白粉を入れる容器特大の化粧刷毛

テーブルの上に見えることでわかる。

小さな鏡の額縁はヨーロッパにはない熱帯性常緑高木の黒檀

窓に嵌ってっているのは贅沢な着色ガラス

右端に置かれているのは、スパニッシュチェアと呼ばれた革張りの椅子で、

丸い鋲がいくつも打ちつけられているのが特徴。

これがその上、背もたれの下部に赤い総飾りまである。

引用:「欲望の名画」

裕福な家庭のお嬢様が外出の支度をしている日常のひとこまを描いているらしい。

もう、絵画を文字で隅々まで描き切っている感じがした。

感嘆しました。

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この2作品の解説の共通するところ

中野さんの絵画の解説はとてもアカデミックであり、

絵画表現も繊細かつ詳細で、表現豊かでしたが、

この2作品に共通な解説部分がありました。

それは、夏目漱石を例に出しているところです。

ミレイ『オフィーリア』では「草枕」のこの作品が取り上げられていることや

フェルメール『真珠の首飾りの女』では

「それとも夏目漱石のように、育ち盛りの子供のやかましさに癇癪を起こし、怒鳴りながら創作していたのか」

と書かれていました。

日本の文豪を例に出してくるところも何かギャップがあって面白い。

中野さんは夏目漱石のファンだったのでしょうか。

そんなことも気になりました。

おまけ 樹木希林さんの「オフィーリア」

ミレイ『オフィーリア』の解説の最後に

樹木希林さんの広告が「オフィーリア」を元絵にしていたことが

書かれていましたので、

ここでその絵をおまけで付けておきます。

上記写真出典:朝日広告賞

宝島社の広告で新聞見開きに大きく掲載されたことを覚えています。

かなりインパクトがあって、

死ぬときぐらい好きにさせてよ」のコピーは素晴らしかった。

中野さんも同じような感想を書かれていました。

著書の中には写真がなかったので、

ここでフォローさせて頂きます。

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