画家 熊谷守一の晩年の映画
『モリのいる場所』は
晩年の画家熊谷守一の生活をドラマ映画化したものです。
私は熊谷守一氏の絵画が大好きで、
関西で展覧会がある時は観に行きたくなるのです。
この映画が決まった時は、マジかと思ったほどで
熊谷守一氏は美術ファンであれば著名な方ですが
一般的にはまだまだ名を知られていないと思っていたので、意外でしたね。
晩年はこの映画のように自宅の庭から出ることなく
日々、昆虫や小さな生き物たち、植物を描いていたようで
その風ぼうや生活スタイルから「仙人」とも呼ばれていたようですが。
【収録内容】
昭和49年の東京。30年間自宅のちっちゃな庭を探検し、草花や生き物たちを飽きもせずに観察し、時に絵に描く画家モリ(94歳)と、その妻秀子(76歳)。52年の結婚生活同様、味わいを増した生活道具に囲まれて暮らすふたりの日課は、ルール無視の碁。
暮らし上手な夫婦の毎日は、呼んでもいないのになぜか人がひっきりなしにやってきて大忙し。
そんなふたりの生活にマンション建設の危機が忍び寄る。陽が差さなくなれば生き物たちは行き場を失う。
慈しんできた大切な庭を守るため、モリと秀子が選択したこととは―。引用:「モリのいる場所」
映画の面白さは、熊谷氏の強いこだわりと無欲の生き方
熊谷氏は若い頃から自分の生きるスタイルを変えることができなかった人で
絵を描くことも自分が書きたいと思う時に、
自分が描きたいと思うものしか描けなかった。
極貧の生活の中でも、子供が病気で亡くなる時も、
金銭目的で絵は書けなかった人ですから。
そんな人の晩年ですから、行動は常識では計れない。
そこが今回の映画の面白さですよね。
温泉旅館の名前の看板を依頼しにきて、
旅館名ではなく「無一物」と書いてしまうシーンや
文化勲章受章をあっさり断ってしまうシーンなどは
その人柄がよく出ていて、おかしいやら感心するやらで。
熊谷 守一(くまがい もりかず、1880年〈明治13年〉4月2日 – 1977年〈昭和52年〉8月1日)は、日本の画家。
日本の美術史においてフォービズムの画家と位置づけられている。
しかし作風は徐々にシンプルになり、晩年は抽象絵画に接近した。
富裕層の出身であるが極度の芸術家気質で貧乏生活を送り、「二科展」に出品を続け「画壇の仙人」と呼ばれた。勲三等(辞退)、文化勲章(辞退)。
引用:ウィキペディア
熊谷氏の作品を知って観ると、もっと楽しめる映画
熊谷氏の昆虫や鳥、植物の絵を知っていると
この映画はもっと楽しめると思う。
熊谷氏の絵はものすごくシンプルで素朴。
邪念が感じられない絵なんです。
だから、この映画で庭を散策し虫たちをずっと見続けている姿に
あまり違和感を感じなかった。
なるほど、こんなふうに観察して絵を描いていたんだ
だからこんな絵になったんだって素直に納得できる感じがしました。
- 監督・脚本:沖田修一
〈キャスト>
- 熊谷守一:山﨑努
- 熊谷秀子:樹木希林
- 藤田武:加瀬亮
- 鹿島公平:吉村界人
- 朝比奈:光石研
- 岩谷:青木崇高
- 水島:吹越満
- 美恵ちゃん:池谷のぶえ
- 荒木:きたろう
- 昭和天皇:林与一
- 知らない男:三上博史
引用:ウィキペディア
最後のシーンが印象的
最後に妻の秀子さんと碁を打っているシーンが印象的でした。
守一「俺は、何度でも生きるよ」
「今だってもっと生きたい」
「生きるのが好きなんだ」
秀子「こんなに長く生きちゃって、うちの子たちは、あんなに早く、死んじゃった・・」
引用:『モリのいる場所』小林雄次著
このシーンが守一と秀子の今までの一生が見えてくる見事な場面でした。
熊谷守一の自分自身を強く生きてきたその力と
その反面に、子供を失ってきた大きな代償。
光と影はいつも、どの人生にもあるなと感じましたね。
この映画は文庫にもなっています。
文字で読んでも面白かったですよ。
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