漫画『文豪春秋』は文豪を学ぶ本
「文豪春秋」は『文學界』2017年6月号~2019年11月号まで連載されたものを
単行本化したものです。
タイトルに惹かれたので読んでみました。
内容は30人の文豪の秘話やエピソードが描かれているんだけど、
5ページ程の中にそれぞれの文豪たちのほぼ一生が描かれているので
いい表現をすれば“内容が詰まっている”、
悪い言い方をすれば“わかったつもりになる”
って感じでしょうか。

“水木しげる風”の漫画が特徴的ですが
画風を愉しむというよりは、
文章や内容を理解する方が注力されていて
漫画を愉しんだというイメージは少ないからかもしれない。
どちらかと言えば、文豪の成り立ちを“学んでいた”という感じでしょうか。
各章の最初に菊池寛の銅像と女性従業員の語りの入りと
最後に小さなオチがあるところが、漫画らしいところでしょか。
<目 次>
出典:文豪春秋 ドリヤス工場著
『文豪春秋』の中に1人の文豪を追いかけるのではなく
あるテーマで括る回が3つ程あった。
「猫」、「酒」、「家」のエピソードである。
このうち「猫」は下のブログに書いたのでそちらを見て頂くとして

今回は「酒」と「家」のエピソードをピックアップしてみたい。
「酒席百景」第17回 (酒エピソード)
この回の最初に出てくるのは太宰治である。
椅子に足を乗せている太宰の写真。
出典:林忠彦賞事務局
この写真は銀座の「ルパン」で撮った写真で撮影者は写真家の林忠彦。
織田作之助をを撮りにに来ていたそうだが、太宰が「俺も撮れ」とせがんで撮った1枚らしい。
この店が狭い為にトイレぼ扉を開けてそこから撮ったというエピソードがあった。
こういうエピソードは豆知識としては嬉しいよね。
若山牧水
出典:Amazon「文豪春秋」
他には若山牧水、梶井基次郎、小林秀夫と中川一政、立原正秋、吉行淳之介等の酒エピソードが
ショートで紹介されている。
もう一つ面白いと思ったエピソードが

中上健次の話に「見城徹」という現役社長の話が出てきたこと。
中上健次が30万円の借金を見城徹の申し出て、芥川賞を取った際にその賞金で返す約束する。
そして芥川賞を取って見城徹へ返済するが、その金でまた飲みに行くという、
中川健次×見城徹氏らしいエピソードが載っていて、ココだけ親近感が湧いて嬉しかった。
『家屋敷の手帖』第27回 (家エピソード)
この回の最初は夏目漱石が千駄木の借家に住んで「吾輩は猫である」を執筆した、
その作中にその間取りや周辺の様子を描いている。
夏目漱石
出典:Amazon「文豪春秋」
びっくりしたのは、
その借家が愛知県の明治村に移築されて「猫の家」と呼ばれていて
展示されているという。
森鴎外・夏目漱石住宅「博物館 明治村」(愛知県犬山市)
先日「博物館明治村」へ行ってきた際
森鴎外・夏目漱石住宅も見学してきた。
(旧所在地 東京都文京区千駄木 昭和39年移築)

家屋としてはそれ程珍しいものではないのだけれど
森鴎外が明治23年から1年半程ここで過ごし
夏目漱石が明治36年~39年までここで過ごしたようです。

その間、森鴎外は「舞姫」を執筆し、漱石は「吾輩は猫である」を発表している。
建物の内の展示は、当時の漱石の書斎が再現され、音声が流されていた。

綺麗なお庭で、当時の文豪の生活の場へタイムスリップした感じがしたな。

川端康成
出典:Amazon「文豪春秋」
その他、太宰治、川端康成、永井荷風、柳田國男、江戸川乱歩、井上靖、の家屋
とうとう外国人作家も加わり、ヘミングウェイ、ユーゴー、ゴーリキー
も紹介されています。
もう一つ面白いと思ったのは
山の上ホテルの話が出てきたこと。
川端康成、檀一雄、小林秀雄、三島由紀夫等が「カンヅメ」になって定宿であったこと。
こんな話を聞くとやっぱりそこへ行きたくなりますよね。
檀一雄
出典:Amazon「文豪春秋」
この第27回はもともと澁澤龍彦を紹介する回だったようで
澁澤龍彦は北鎌倉の家に金子國義、四谷シモンの作品を集めて
自分の趣味を反映させた「ドラコニア」を作り上げたそうな。
※「ドラコニア」とは龍の王国、すなわち「渋沢龍彦ランド」
今もそのままの部屋で残っているそうです。
ゾクゾクしてきそうな部屋なんでしょうね。
まとめ
今回は「酒」と「家」のエピソードでテーマを絞って書きましたが
この「文豪春秋」はある意味、覚えていれば蘊蓄が語ることができる、
文豪のエピソードが詰まった内容になっています。
太宰治
出典:Amazon「文豪春秋」
彼らの性格やどんな生活を送ってきたかがわかれば
小説の読み方も変わってくるでしょうね。
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